日本の伝統演劇(三大国劇)には、能楽(能と狂言)、歌舞伎、人形浄瑠璃が挙げられ、江戸時代以降、人形浄瑠璃は歌舞伎と人気を二分した伝統演劇です。盛岡の人形浄瑠璃は、南部2代藩主重信候が盛岡城を落成した寛永年間に淡路から盛岡に伝わったとされ、昭和62年に盛岡市鉈屋町の鈴江家から浄瑠璃人形と古文書が発見されました。この浄瑠璃人形と古文書は、きわめて黎明期のもので、全国に伝わる淡路浄瑠璃人形の新たな北限となっており、そのなりたちを解明する上で極めて貴重な資料です。
岩手県立大学ソフトウェア情報学部では、鈴江家当主鈴江茂様と岩手県演劇協会(IASC)の依頼により、浄瑠璃人形のX線CT測定と解析、かしら部分と烏帽子の精巧なモデル制作に協力しています。最新解析方法であるX線CTスキャンにより、かしら部分や烏帽子の内部も含めた3次元情報が得られ、従来の計測手法では得られなかった新しい発見や歴史的事実の解明が期待できます。
写真1は、今回、測定した浄瑠璃人形「三番叟」です。写真2は取得したCTスキャンデータと内部構造を3次元表示したものです。写真3はCTスキャンデータからポリゴンモデルへの変換、CADモデルの作成注1)、3Dプリンタで造形した頭部のモデルです。最終的に専門の絵師による彩色とデジタルプリントされた衣服により、精巧で廉価な「レプリカモデル」が完成します。
注1)CADモデルの作成にはいわてデジタルエンジニア育成センターの協力を得ています。
写真1 鈴江家で発見された浄瑠璃人形(かしら部分、烏帽子、全体)
写真2 浄瑠璃人形のCT測定と内部構造の3次元表示
写真3 ポリゴンモデルへの変換、CADモデルの作成、3Dプリンタによる造形