出土遺物に対して、工業用CT装置で測定した3次元画像データより、文様の可視化や出土遺物の造形を行った。具体的には、計測した3次元画像データから文様のエッジ抽出やエッジ強調を行い、学芸員の書いた文様とほぼ同等となるような、効率的な表現手法を開発した。また、工業用CT装置とコンピュータによる、膨大な未整理遺物を効率的に整理する方式を提案した。
遺跡発掘調査による出土遺物の調査・整理は、土器片から形状復元を行い、その土器を学芸員がひとつ一つ定規等の計測器を用いて形状を書き起こし、縄目文様等を模写する方法により行われている。株式会社タックエンジニアリングでは、ステレオ画像計測技術によって、形状復元した出土遺物のデジタルオルソ画像(正射投影画像)を作成し、これにより外側形状と大まかな文様を抽出トレースする方式を提案した。本方式は、これまでの手法に比べて、平均30%程度の時間短縮を可能とした。しかしながら、
1)抽出した形状が写真撮影方向やステレオモデルの精度に大きく左右されること
2)内空間の測定が不可能なこと
3)細かな縄目文様を画像から抽出することは困難であること
などの問題があるため、ほとんどの作業では、経験を積んだ学芸員の手計りによる形状補正や文様の具象化に頼らざるを得ないのが現状である。
上記のステレオ画像計測技術による方式を改良するために、我々は、理化学研究所、株式会社タックエンジニアリングと共同で、遺跡発掘による出土遺物の計測・整理に関する基礎的研究を行った。具体的には、工業用CT装置で計測した3次元画像データから密平面投影図や文様のエッジ抽出を行い、学芸員の書いた文様とほぼ同等となるような、効率的な表現手法を開発した。従来の手作業であったトレース部分をコンピュータと工業用CT装置で置き換えることで、その作業効率と精度の向上が可能となった。
今後、工業用CT装置を用いたデジタルアーカイブ技術を確立することで、遺跡発掘調査の進歩に貢献する。このような研究を行っている自治体や企業はほとんど無く、先進事例としても社会的インパクトが大きい。
従来方法
高精細3D計測装置とフィルタリング処理(画像フィルタ、幾何フィルタ)を利用した自動製図(1時間~1日)