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心臓カテーテル手術を支援する心臓定量化ソフトウェアの研究開発

 

研究期間内では、ブロッケンブロー手技と左心耳閉鎖術が必要な患者に対して、カテーテル経路と左心耳閉鎖のシミュレーション機能を研究開発し、臨床応用を行いながら、その機能や精度、使い易さを向上させる。術前計画支援機能には、汎用的な3次元画像処理機能(画像表示/画像編集/3Dプリント/計測機能)に加えて、以下の機能を搭載する。

 

1)各種画像(CT、エコー、SPECT)の位置合わせ

狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患を特定する方法として、経食道心エコー検査やSPECT画像による診断が挙げられる。経食道心エコー検査は、エコー画像のみを参照しながら医師が手動でプローブの深さ、扇状の超音波照射角度を感覚的に調整して行う。しかし、エコー画像のみでは、心臓の3次元的な位置把握が困難である。そこで、心臓CT画像とエコー画像を併用し、相互情報量を評価尺度とした「自動位置合わせ機能」や「対話的な位置合わせ機能」を実現する。現在は、評価尺度として相互情報量、最適化手法としてDownhill Simplex法やPowell法を用いて、時系列CT画像やエコー画像の位置合わせを行っている。使用する変数はXYZ各軸方向への移動および回転の6変数である。また、心臓CT画像から冠状動脈や上行大動脈を自動抽出することで、心臓の位置を推定している。今後、CT画像とSPECT画像の3次元位置合わせも行う予定である。

 

2)大動脈、冠状動脈、心臓内腔などを指定したルールや自動検査を行う機能

虚血性心疾患の診断では虚血部に血液を送っている責任血管を特定することが重要である。しかし、心臓CTのスライス画像から冠状動脈のつながりや狭窄を観察することは困難である。特に心臓CT画像のボリュームレンダリング表示では、他の人体構造が冠状動脈の視認を妨げるため観察が難しくなっている。心臓CT画像の読影を効率化・定量化するために、心臓CT画像からハフ変換を用いて上行大動脈を抽出する。更に、上行大動脈から冠状動脈および左心室の自動抽出を行う。冠状動脈については、細線化フィルタリングを用いた自動AHA分類を行い、狭窄部を特定する(図1)。

TEE-03図1 心臓CTからの冠状動脈と左心室の自動抽出、冠状動脈の自動AHA分類

 

3) 心臓エコー画像の術前計画支援ツールの研究開発

本共同研究1では、心臓外科医からの要望が多い、心臓エコー画像に対する術前計画支援ツールの研究開発を行う。岩手医科大学医学部の教員とスタッフから現場ニーズを調査し、エコー検査装置と「同等の操作感」を目指す。システムデザインについては、3次元可視化ソフトの豊富な製品開発ノウハウを持つ株式会社ジェーエフピーの意見を取り入れる。システム起動時には経口部の位置を抽出して、プローブ位置を自動決定する。更に、経食道心エコーの診断ルーチンを自動化して、0度(水平断)、90度(垂直断)、135度(長軸)、45度(短軸)の選択や、ダイヤル式の回転とビーム中心の対話的な微調整を可能とする。同時に3次元ビューとエコービューの対応により、互いの位置を分かり易く表示する(図2)。

TEE-04図2 心臓CTとエコー画像の対話的表示

 

研究成果:
1) S. Sekimura, A. Doi, K. Kato, M. Hozawa, Y. Morino, “An Extraction Method of Coronary Artery and Left Ventricle from Heart CT Images based on Hough Transformation and Region Growing”, The Twelfth 2017 International Conference on Knowledge, Information and Creativity Support Systems (KICSS 2017), 2017/11, Nagoya (to be appeared).
2) A. Doi and T. Chiba,“An automatic image registration method using downhill simplex method and it’s applications”, The 12th International Workshop on Network-based Virtual Reality and Tele-existence (INVITE 2017), 2017.
3) 関村匠斗, 土井章男, 加藤徹, 朴澤麻衣子, 森野禎浩, ”心臓CT画像からの冠状動脈の自動抽出および分類手法の提案 ”,日本バーチャルリアリティ医学会, 第17回日本VR医学会学術大会,2017/8/26.
4) 三田裕介, 土井章男, 馬渡太郎, “医用画像レジストレーションの最適化手法に関する基礎的研究”, 平成29年度第2回芸術科学会東北支部・研究会論文29-02-01, 2017.
5) M. Hozawa, Y. Morino, Y. Matsumoto, K. Yoshioka, R. Tnaka, T. Tashiro, A. Kumagai, K. Nagata, A. Doi, “Morphology and Functional Characteristics of the Left Atrial Appendage“, TOPIC2016(Tokyo Percutaneous cardiovascular Intervention Conference 2016), 2016/7.
6) 土井章男,関村匠斗,加藤徹,朴澤麻衣子,森野禎浩,”心臓カテーテル手術のための術前計画支援に関する基礎的検討”,日本バーチャルリアリティ学会第30回テレイマージョン技術研究会(可視化情報学会見える化研究会との合同研究会),Vol. 021,No.TTS03,2016.
7) 関村匠斗,土井章男,朴澤麻衣子,森野禎浩,”3次元心臓CT画像からの自動冠動脈抽出に関する研究”,第79回情報処理学会全国大会(学生奨励賞), 2017/3.
8)関村匠斗,土井章男,加藤徹,朴澤麻衣子,森野禎浩,”心臓CT画像からの冠状動脈と左心室の自動抽出法”,電子情報通信学会医用画像研究会,2017/5/25-26, 名古屋工大.

 

1)本共同研究は、公益財団法人JKAの研究支援を得ています。
競輪&オートレースの補助事業