<複雑な現象をわかりやすく映像化します>

旧南部氏別邸庭園

「旧南部氏別邸庭園(中央公民館別館)」は、城下町盛岡を象徴する地域の文化遺産であり,和洋の意匠を織り交ぜた明治期建築の造形の規範となる建物として,文化財保護法に基づき平成25年(2013年)12月24日付で有形文化財に登録されました。旧南部家別邸は,明治41年(1908年),明治維新後に華族となった旧盛岡藩主南部家の別邸として新築された建物で,設計監修は東京駅や岩手銀行中ノ橋支店旧館(旧盛岡銀行本店)などを手がけた葛西萬司が行っています。その後,建物は岩手県産業文化館,盛岡市産業文化館,盛岡市公民館と変遷し昭和55年(1980年)の改修により現在の姿となり,中央公民館別館として市民の皆さんに親しまれています(図1)。

nanbu-fig_a               図1 旧南部氏別邸庭園

計測では、三王岩でも使用したドローン(DJI社のS900とPhantom-4)と3次元レーザー計測器(FARO社のFocus3D 120)を使用しました。S900に搭載したカメラはSONY社のNEX7で、6000×4000の高解像度の写真を連続で撮影可能です。Phantom-4では、4Kビデオの撮影を行いました。

nanbu-fig_b              図2 S900とPhantom-4

S900は6ローターヘキサコプターで一眼カメラ(SONY NEX7)を搭載しており、庭園全体を空中から撮影しました。しかし、S900では低木の下等の撮影が困難なため、細かい部分は小回りの利く小型ドローン(phantom‐4)を使用しました。同時に空撮作業を行いながら、地上ではFocus3D 120を用いて、3次元レーザ計測を行いました。

nanbu-fig_c             図3 FARO社Focus3D 120

3次元計測器装置は、建築物やプロジェクトの既設構造物のデータ取得や3次元可視化のための3Dスキャナーです。頭部にあるカメラにより、現在向いている方角の前後360°近くを計測し、徐々にカメラの向きを左右にずらし全体のデータを取得していくことが可能です。一か所のデータ取得におよそ10分を要し、一連の作業を何か所を行い庭園全体を計測して行きます。

今回の計測では、ドローンを使用した空からのデータとFAROを使用して地上から計測したデータを合わせる必要があります。2つのデータを合わせるのに必要になるのが「座標情報」になります。これらの計測が終了した後、計測地点のGPS情報を取得する作業を行います。作業では計測地点の各場所にマーカー座標(図4)を設置し、GPS座標受信機を使用して計測地点の緯度経度の情報を取得します。計測機械は、Trimble R5とTopcon GPT9005Aを使用しました。

nanbu-fig_d                図4 マーカー座標