主に医用画像データの処理を行うことを目的とした先進的な3次元画像処理システムを研究開発中です。本システムでは、CTやMRIによって得られた2次元断面画像群から3次元形状モデルを容易に生成することが出来ます。また、3Dプリンタや光造形装置用の出力ファイルを容易に作成出来ます。簡単な対話メニューから操作できるように設計されているため,3次元画像について初心者でも十分使いこなせます。本システムは、Windows XP/Vista/7/8.x(32、64ビット)上で稼働します。 本システムの基盤技術は、3次元画像処理と3次元コンピュータグラフィックスであり、双方の技術をうまく組み合わせることで、より有効なビジュアル・コンピューティング技術の確立を目指しています。本研究成果は、岩手県立大学発ベンチャー企業のアイプランツ・システムズ株式会社に技術移転され、製品名「Volume Extractor Ver.3.0」として、製品化されています。また、本製品は、平成27年4月に公益財団法人りそな中小企業振興財団と株式会社日刊工業新聞社が共催します第27回「中小企業優秀新技術・新製品賞」ソフトウェア部門の奨励賞を受賞しました。
本研究の一部は、文科省基盤研究費(C)、科学技術振興機構A-STEP、経済産業省「医工連携事業化推進事業」から研究助成を受けております。
フォースフィードバック付触覚デバイスを使用した鍼トレーニングシステムの開発
鍼治療教育の現場では、初めに練習器を用いた訓練を行った後、実際の鍼を用いた実習を行います。しかし、通常の練習器の訓練が人体の構造をシミュレートしたものではないため、人体を想定した練習が不十分のまま、人への実習に進んでいるのが現状です。こうした状況を改善するため、Windowsマシンとフォースフィードバック付触覚デバイスを用いた鍼治療トレーニングシステムを開発しています。人体の部位とツボを3次元データとして表示し、触覚デバイスの操作でツボに触れることによって、フォースフィードバックが働き、鍼が人体に触れているかのように知覚できます。
平成27年5月には第64回全日本鍼灸学会学術大会ふくしま大会にて、”経穴取穴に関する解剖学的構造の可視化及び3Dモデルの製作 -MRI画像に基づく大腰筋の抽出と製造-”の研究成果が発表されました。平成27年12月には、「経穴取穴に関する解剖学的構造(骨・筋)の可視化及び3Dモデルの製作と教育効果(第1報)」が全日本鍼灸学会雑誌に採択されました。
高度な骨切り術、人工関節置換術の術前計画支援と人工関節デザインシミュレーション
CTやMRIによる撮影の体位は臥位で行われるのに対しX線CR撮影においては立位で行われています。骨部の相対的位置は体位によって異なるので荷重の掛かる関節部の状態は臥位と立位では一致しません。一般に、体位が異なる医用画像間のレジストレーションは、アフィン変換等による画像処理や相互情報量の計算等が膨大になります。本研究では、骨の特徴点を利用した高速なレジストレーション手法を用いて、荷重状態のレントゲン画像上に大腿骨や脛骨の3次元画像を配置する手法を開発しています。さらに、本手法を利用した、CT画像ベースの骨切り術、人工関節置換術のた3Dベース術前計画支援システムJointVisionを開発しています。CT画像ベースの骨切りやインプラント配置は、正確な3次元空間上で行えるため、従来の術前計画(CR画像ベース)よりも精密な検討が可能です。また、日本人の体型に合った人工関節設計やそのデザインシミュレーションを行っています。現状の人工関節は、材質の寿命の問題(耐久年月は約10~15年)や金属アレルギー問題があります。本研究で使用する材質は、東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授が開発された生体に適した高強度のコバルトクロム合金であるCOBARION(コバリオン)です。我々は、その材質を生かした、世界初の長寿命人工関節の研究開発を目標としています。
平成27年6月には、日本バーチャルリアリティ学会第26回テレイマージョン技術研究会にて、”3次元ベース術前支援システムの構築とその応用”の研究成果が発表されました。
本研究の一部は、文科省地域イノベーション戦略支援プログラム グローバル型(グローバル拠点育成)【いわて県央・釜石地域】、文科省基盤研究費(C)から、研究助成を受けています。
日本の伝統演劇(三大国劇)には、能楽(能と狂言)、歌舞伎、人形浄瑠璃が挙げられ、江戸時代以降、人形浄瑠璃は歌舞伎と人気を二分した伝統演劇です。岩手県立大学ソフトウェア情報学部では、鈴江家当主鈴江茂様と岩手県演劇協会(IASC)の依頼により、浄瑠璃人形のX線CT測定と解析、かしら部分と烏帽子の精巧なモデル制作に協力しています。モデル制作に3Dプリンタを用いることで、廉価なレプリカモデルの作成が可能となり、人形芝居の練習に活用できます。また、古い人形を分析し、復元させる試みも進めており、現代に「北限の人形浄瑠璃」芝居を復活させるきっかけとなる事を目指しました。
平成25年には日本バーチャルリアリティ学会第25回テレイマージョン技術研究会にて、”工業用CT装置と3Dプリンタを用いたレプリカ製作手法とその応用”の研究成果が発表されました。
本研究の一部は、岩手県立大学地域政策研究センターの地域協働研究(地域提案型)の研究助成を受けていました。
光干渉断層計によって取得した眼底の2次元断層画像群を3次元化し、眼底をよりわかりやすく見ることが可能になりました。光干渉断層計は探査光として赤外線を用いているため、深さ方向に10~20 µmの高分解能を有し、目に優しい網膜層の検査法です。特に、本研究では、誤差を含む原画像に対して、分かりやすい表現手法や使い易い対話操作の研究開発を行い、眼科医のための診断支援システムを構築しました。
産科医や助産師向けの、触覚(実体モデル)と視覚(仮想モデル)を用意し内診指の位置や方向をリアルタイムに取得することで、正常・異常な状態をシミュレートする内診トレーニングシステムを開発しました。本システムでは、胎児骨盤内下降状態の正常と異常の状態が体験可能です。研究開発された、コンピュータ支援の内診トレーニングシステムは、(株)高研より、内診バーチャルリアリティ-モデルLM-095として、発売されました(2010/12)。
くも膜下出血の診断において、医師は多くのスライス画像をチェックしなければならず、非常に多くの時間を必要としていました。この作業を経験のある脳外科医は、脳のしわの部分に着目して診断しています。そこで、我々は、脳のしわの部分における高輝度な画素を計測することで、くも膜下出血の危険率を算出するアルゴリズムを提案しました。本システムにより、医師の負担を軽減する事が可能となります。本研究の一部は、文科省基盤研究費(C)、科学技術振興機構A-STEPから研究助成を受けておりました。
遺跡発掘による出土遺物の計測・整理・デジタルアーカイブの研究開発
出土遺物を産業用CT装置で測定した3次元画像データから、文様の可視化や精密なレプリカ製作を3Dプリンタを用いて行いました。3Dプリンタには、多 くの材質が使用可能ですが、我々が使用している3Dプリンタは石膏タイプのZ250です。また、多くの不完全な土器片から、全体の土器を完成させる形状復元の研究を行っていました。さらに、工業用CT装置とコンピュータを用いて、自治体(教育委員会等)が抱える膨大な未整理遺物を効率的に整理する方式も研究開発していました。本研究は、総務省SCOPE地域ICT振興研究開発から研究助成を受けておりました。
平成24, 25年度成果 平成23年度以前の成果