<複雑な現象をわかりやすく映像化します>

光干渉断層計3次元可視化

 

光干渉断層計を用いて3次元化する技術。これによって取得した眼底の2次元断層画像群を3次元化し、眼底をよりわかりやすく見ることができる。光干渉断層計は探査光として赤外線を用いているため、深さ方向に10~20 µmの高分解能を有し、目に優しい網膜層の検査法とされている。

 

従来、網膜層の検査は超音波でやられていた。しかし、これは100 µm程度の空間分解能では細部構造が十分に見えず、また眼球に直接接触するため被験者に負担がかかる計測法であった。光干渉断層計(以下OCT: optical coherence tomography)は探査光として赤外線を用いている。そのため、深さ方向に10~20 µmの高分解能を有し、非接触、非侵襲、非破壊的である。この特性により、OCTは眼科医療現場において、2次元断層画像を基本とした網膜等の診断装置として使用されてきている。この技術を用いることにより、眼底に起こる様々な病気を事前に防ぐことが可能になり、また、手術などの事前知識としても有用できる。

具体的に、この技術は以下の項目で役立てられる

  • 内境界膜の状態確認
  • 浮腫の状態確認
  • 乳頭の容積確認
  • 病変の推移観察
  • インフォームドコンセント
  • 病態への理解の促進
  • 医学教育

OCR データ形式は以下のようになっている

OCRデータの形式

データ形式 RAW
深さ方向サイズ 1600 pixel
水平方向サイズ 200 pixel
ビット深さ 12 bit
枚数 200 枚

 

本研究で用いたデータセットは健常者の黄斑部を計測したものであり、使用したOCT装置はマイクロともグラフフィー株式会社製である。ピクセル分解能はおよそ、深さ方向に17 µm 、水平方向に10µm となっている。

 OCT画像による眼底断層画像 

OCT装置によるデータ取り込み時間は、200枚で3分程度掛かる。その間、患者はまばたきを極力行わないようにしなくてはならない。まばたきしている間のデータは利用できないデータとなる。時間短縮のため取り込み枚数を減らすなどの対策が必要である。

 

OCTデータの3次元化への課題として以下の2つがあげられる

1)スペックルノイズの除去

OCTで受信されるエコーは、組織体の屈折率の変化する境界からの後方散乱光となる。エコーは眼内の生体組織を透過・多重反射により、網膜層の反射光には不要なランダムスペックルノイズを混在する。このために、エコーの輝度値による網膜層の抽出が容易でなく、かつX線CT画像のような面的な質感は得られない

2)エコーの位置補正

OCTは参照波の光路差を連続に変化させて、ビーム軸方向であるZ軸方向の走査(Zスキャンと呼ぶ)によりエコーを受信する。2次元画像は、Zスキャンを水平方向にシフトして得られるものである。これらのZスキャンデータはお互いに独立したものとなる。このために、計測時間内の被験者および眼底の生体の動きに対して、10µm スケールの位置補正を必要とするが、非常に困難となる。

 

このような問題を解決するために、以下の処理を施す

1)ノイズ除去

2次元画像において、ある輝度値で2値化画像を作り、4連結輪郭法で、図形画素の抽出を行う。Zスキャンデータにおいて、ノイズは隣り合うZスキャンデータと関連性を有しない。一方組織体からの反射信号は関連性があることになる。このような図形画素の形状特性の相違から、ほぼノイズだけを抽出でき、効果的な除去が可能になった。

  Zスキャンデータ 断層画像はZスキャンデータの集まり

2)位置合わせ

センサーに対して、前後(断層画像の鉛直位置補正)と左右(断層画像間の水平位置補正)となる。

鉛直位置補正は色素上皮を基準して行う。各Zスキャンデータで色素上皮を抽出し、この境界が深さ方向に一定の深さ(直線パターンの仮定)に位置するように、各Zスキャンデータの上下位置の調整を行うことである。これによって、網膜層厚は、色素上皮を基準とする内境界膜の高さとなる。

水平位置補正については、上記で求められた網膜層の形状を用いて、相互相関法で水平位置補正を行った。具体的には、隣り合う2つの画像での網膜層形状間の相互相関係数を求め、最大の相関係数のズレで位置補正を行うものである。

位置合わせ処理

 ボリュームレンダリングによる3次元可視化

前処理としてノイズ除去および位置合わせを行なったデータセットでボリュームレンダリング処理を行なうことにより正確な3次元モデルを生成できる。モデルはPC上でマウスを利用して回転させることができ、任意の角度から観察することができるようになっている。

ボリュームレンダリングによる3次元可視化